低山の「道迷い」

ある年の正月明け、近所の南葉山の低山に出かけた。
上はヘナヘナのダウンに下はジーンズで、靴だけはトレッキングシューズという軽装備。
コースは葉山から横須賀までの縦走路で、標高は200mにも満たない。
ちょっと長めの「散歩」のつもりだった。


最初の葉山側の仙元山からは、相模湾の眺望が素晴らしい。
良い気分になって縦走を開始したが、これがなかなかの手ごたえ(足ごたえ?)。
小さなアップダウンの繰り返しで、途中に補助ロープたよりの難所もあって、
四苦八苦。散歩感覚は一気に吹き飛んでしまった。
およそ3時間ほどで、横須賀側の乳頭山にたどり着き、眼下に東京湾を眺めながら
あとは田浦の市街地に下りるだけと、ホッと安堵したが、ここで道に迷ってしまった。
あとで同じコースをトレースして分かったが、乳頭山直下を右に折れる道を見逃して
直進し、おおよそ見当つけて下ったために、源流部へ迷い込んでしまった。


最初かすかにあった踏み跡もそのうち消えてしまい、どんどん不安感がつのる。
ついには不気味なブルーシートの掘っ立て小屋があらわれて、「しまった。完全に迷った」
と恐慌状態になりかかった。
ここで冷静さを取り戻し「迷ったら尾根へ上がれ」という登山者の鉄則を思い出し、
沢沿いに微かにみとめられた踏み跡を上り、なんとか整備された道らしきところへ
出てこれた。途中、トレランの人に方向を確認して、ようやく田浦の市街地へぬけることが出来た。


これは典型的な「低山の道迷い」だった。
近年、中高年者の山岳事故が急増しているが、その約半数は「道迷い」による遭難だという。
「道迷い」による遭難は、ほとんどの場合下山時に発生する。
登る時は、頂上に向かって道が「収束」するが、下山時は道が「拡散」していく為だと言われているが、
さらに、下山時は、疲労に加え、登頂という目的を果たした安堵感から、冷静な判断力が失われる為だとも言われている。
確かに、下山時は迷ったとしても「下ればどこか人的なところに出るだろう」という安易な希望的判断に
陥りやすい。そして迷ったことを認識しても、「引き返す」もしくは「尾根へ登る」という決断が、精神的にも肉体的にも下すのが困難だ。そして、迷い込んだ未知の沢を強引に下り、その結果、悲劇的な状況を招くというケースが、引きも切らない。

迷ったら「引き返す」もしくは「尾根へ登る」という鉄則は守りたい。たとえ低山であっても。

2019年12月02日